リッターSSとツアラーの特性比較
究極の運動性能と快適な長距離性能が描く対照的な世界
大型バイクの世界において、リッタークラスのスーパースポーツ(SS)とツアラーは、それぞれが異なる頂点を目指して進化したカテゴリーです。
SSは本来サーキットでのコンマ一秒を削るために設計されており、1000ccを超える排気量から200馬力近いパワーを絞り出す、まさに公道を走るレーシングマシンと言えます。
その最大の魅力は、圧倒的なパワーウェイトレシオがもたらす加速力と、意のままに車体を寝かせられる鋭いハンドリング性能にあります。
一方でツアラーは、数百キロ、時には一日に千キロを超えるような長距離移動を「いかに疲れず、安全に走破するか」を至上命題としています。
重厚な車体は高速道路での横風にも負けない直進安定性を生み出し、ライダーを走行風から守る大型のスクリーンやカウルが標準装備されているのが一般的です。
SSが「操る喜び」を極限まで追求したストイックな乗り物であるのに対し、ツアラーは「旅のプロセス」を豊かにするための贅沢な移動手段としての性格が強いと言えるでしょう。
同じ大型バイクという括りであっても、信号待ちのたびに前傾姿勢で腕を休めるSSライダーと、ゆったりとしたシートに身を預けクルーズコントロールを使いこなすツアラーライダーでは、見ている景色も疲労の質も全く異なります。
まずは自分がバイクに対して「スポーツ」を求めているのか、それとも「旅」を求めているのかを明確にすることが、相棒選びの第一歩となります。
自分のライディングスタイルに最適な一台を見極める基準
リッターSSとツアラーのどちらが自分に合っているかを診断するには、年間の走行シーンを具体的にシミュレーションすることが重要です。
もしあなたが、週末の早朝にワインディングロードへ向かい、コーナーのひとつひとつを丁寧に攻略することに最高の快感を覚えるのであれば、SSがもたらす一体感に勝るものはありません。
SSの選び方としては、最新の電子制御がどれだけ充実しているかに注目すべきです。
トラクションコントロールやウィリー制御などが細かく設定できるモデルなら、リッタークラスの強大なパワーを安全に楽しむための心強い味方になってくれます。
対して、キャンプ道具を満載して知らない土地の温泉を巡ったり、タンデム(二人乗り)でパートナーと一緒に景色を楽しみたいという用途なら、迷わずツアラーを選ぶべきです。
ツアラー選びのポイントは、積載性と足つき性のバランスにあります。
パニアケースが純正で用意されているモデルは、後付けのバッグよりも重心設計が優れており、荷物を積んだ状態でもハンドリングが乱れにくいという利点があります。
また、自分が「短距離を濃密に走りたい」タイプなのか、「長時間をゆったりと過ごしたい」タイプなのかを自問自答してみてください。
峠の頂上でヘルメットを脱いだ時に、膝や腰の痛みよりも充足感が勝るならSS向き、夕暮れのサービスエリアで「まだあと200キロは走れる」と感じたいならツアラー向きという、分かりやすい適性の差が現れるはずです。
憧れだけで選ぶ前に知っておきたい所有後の現実と注意点
素晴らしい性能を持つリッターSSやツアラーですが、実際に所有するとなると、カタログスペックには現れない苦労や注意点も付いて回ります。
SSにおける最大の注意点は、その過激な前傾姿勢による身体への負担と、低速域での扱いにくさです。
大型バイクのSSは、時速100キロ以上での走行を前提とした空力設計がなされているため、渋滞路や市街地でのストップ&ゴーは苦行に近いものがあります。
特に夏場のエンジン熱は凄まじく、カウル内にこもった熱気がライダーの太ももを直撃するため、厚手のレザーパンツが必須となるなど、服装の選択肢も制限されがちです。
一方のツアラーにおける注意点は、その巨大な「重量」と「サイズ感」です。
フル装備のツアラーは車重が300キロを超えることも珍しくなく、ツーリング先の駐輪場が少しでも傾斜していたり砂利道だったりするだけで、取り回しに多大な神経を使います。
「旅先で美味しい店を見つけたけれど、駐車スペースが狭くて諦めた」という経験は、多くのツアラー乗りが一度は通る道です。
また、どちらのジャンルにも共通して言えるのは、大型バイクゆえの維持費の高さです。
ハイグリップタイヤを履くSSなら1万キロ持たずに高額な交換費用が発生しますし、複雑な電子制御やカウルを持つツアラーは、一度の転倒が数十万円の修理費に直結します。
こうした「負の側面」も踏まえた上で、それらすべてを許容できるほどの情熱を注げるモデルに出会えたときこそが、本当の意味での大型バイクライフの始まりと言えるのではないでしょうか。
